福島 啓悟

ミクロの視点で
界面をシミュレートする

  • 福島 啓悟
  • FUKUSHIMA Akinori
  • 工学部 講師(ナノ材料科学、ナノマイクロシステム)

Profile

東京都出身。2011年3月、京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。2011年、東北大学流体科学研究所学術研究員。2012年、日本学術振興会特別研究員(PD)。
2014年、東京農工大学工学部特任助教を経て、2016年5月、福井大学工学部講師に着任、現在に至る。
研究者詳細ページ

見ているのと全く違う微細な世界

 私は、主に液体と固体の「界面」で起きる現象の理論モデルの探究として、コンピューターでミクロの世界を再現する分子シミュレーションに取り組んでいます。
 界面は液体と固体のほか、液体と空気、また液体同士、固体同士でも性質や状態の異なるモノが接している境目のことです。水と油の境目などは、界面の身近な例です。さて固体上に液体の水滴が乗っている界面では、一見、水滴が流れたり、止まったりするだけに見えます。でも目に見えないミクロのレベルでは、界面をはさんで分子が作用し合うダイナミックな現象が起きているのです。この目に見えない界面で分子がどのように振る舞っているか、その世界のお話です。
 例えば、あらゆる電子機器の心臓部となる半導体チップの製造に深くかかわるテーマ。シリコンなどの基板上にナノメートル(100万分の1ミリメートル)単位の小さな溝を刻んで回路パターンを描く工程では、表面の微細な不純物をきれいに取り除かないと極微の回路を完成させることはできません。洗浄が非常に重要になるのですが、実は、純水を使って洗い流し乾燥させる際、界面に作用する水の表面張力が強すぎて溝が壊れてしまうおそれがあります。それを防ぐ技術の開発の基礎が、界面の科学なのです。

 

生成文液滴の模式図。液体領域の壁に接している厚さ数nmの部分では、
液体とは異なる動きをすると考えられている。

解けない疑問 解答をあたえたい

 界面現象を解明するためには実験も重要です。しかしミクロなレベルで、分子が実際、どんな挙動をしているのかはよくわかっていません。現実では数グラムの物質にも24桁もの数の分子が含まれていますがすべての分子を計算対象とする事は不可能です。私たちの研究では分子数万個程度(量子力学的な手法を使う場合は数100個)に限定し何日もかけて行ってシミュレーションしていきます。その解析結果が、企業などの研究開発の効率化や微細加工の課題解決に貢献する可能性があるのが、面白いところです。
 世界中の研究者が疑問に思う実験結果が出たとき、納得できる解析結果を提供することも私の役割だと考えています。製品開発や新素材開発といったものからは遠い基礎分野ですが、いつか、固体と液体の界面における液体の動きに関して、独自の理論モデルを構築できれば嬉しいなと思っています。

It's My Favorite!

英国式金管バンドでテナーホルン(アルトホルン)という楽器を吹いています。研究の合間に練習時間を確保するのは大変ですが、定期演奏会後の打ち上げは格別です。