平成17年度 福井大学教育地域学部学校教育課程卒業/眼鏡デザイナー
木下 勝雄さん
私は、福井大学教育地域科学部で美術を学びました。他の美術系大学とは異なって、絵画?彫刻?工芸と幅広い分野に触れる機会が得られたことがものづくりをする上での引き出しを増やすことにつながりました。私が特に熱中したのは鋳型に流し込む金工です。宮崎先生の最初の授業で、金属を溶かして鋳型に流し込み、造形をつくる面白さを目の前で見せてもらい、“ものづくり”の奥深さに目覚めました。宮崎先生は鋳造がご専門で「こういう作品をつくりたい」と相談すると、親身になって相談にのってくださいました。こちらの思いに全力で応えてもらえるのは嬉しかったですね。また、同級生や先輩、後輩との結束が固いのも福井大学の良さですね。作品づくりは大きなものになると一人では制作が難しいため、まわりに協力してもらうなど自然と交流する機会が多く、打ち上げもよく開かれました。先生ともお酒の席でざっくばらんにお話させていただくなど、いろんな場面で得るものの多い充実した4年間となりました。
卒業後は眼鏡メーカーに就職し、眼鏡フレームのデザインを担当。企画、デザイン画、試作品、パッケージデザイン、プレゼンテーションまで広く関わっています。眼鏡フレームの素材はさまざまで、素材の質感もデザインを左右する大きな要素となります。大学時代にシルバーアクセサリーの制作をはじめ、多くの素材に触れ指先で覚えた感覚はプロダクトデザイナーとしての大きな武器。眼鏡フレームは素材の質感や特性がデザインを左右する大きな要素となります。どの素材を使えばどのような仕上がりになるか企画段階からリアルに完成を想像できるので、デザインをする上で大きく役立っています。また、先生に言われたことで今も心に残っているのが、「ちゃんとしたものづくりをしないと、子どもたちに伝わらない」という言葉。美術という分野はつい独りよがりになりがちですが、相手に伝えることを意識したものづくりをする視点は、仕事でも大きく活かされ、教育地域科学部で美術を学んだことの良さを改めて実感します。今後も大学での学びを生かし、眼鏡産業が盛んなこの地から、世界に通用する眼鏡づくりに挑戦していきます。
木下君は私が福井大学に着任した年に入学した学生で、いわば同期生のような感覚です。初めて会った時に「僕は金工をやりたい」と言ったことをよく覚えており、私自身もその熱意が励みとなりました。大学では精密鋳造という繊細な方法で制作を続け、美しい作品を生み出してくれました。これは眼鏡デザインの仕事にもつながるもので、彼にとっては非常にふさわしい活躍の場が見出されたのではないでしょうか。私自身も学生時代から金属を素材とした造形活動を続け、伝統的な仕事から抽象的な作品までさまざまな表現を模索して今日に至っています。独りよがりにならず他者の視線を意識した作品づくりを学生にも伝えています。これから大学に進学する皆さんには、知識や技術を学ぶのはもちろん、身に付けたことを礎に自分に誇りを持って矜持を失わずに生きていくことの大切さも学んでほしい。福井大学は、そんなステージとして門戸を開いています。